レッスンは分かち合って成り立っている
ダンスなど身体を使うグループレッスンでは
みんなで様々なものを分かち合うことによって成り立っています。
それぞれの時間やスペース、エネルギーを他の
生徒たちや先生と分かち合っているのです。
レッスンの短い時間の中でも、助け合い
協力する経験を通して
分かち合う心を学んでいくのだと思います。
他の人が練習したい時はスペースを
どれくらい開けてあげたら良いのか。
一緒に使うものを
限られた時間内でどのように譲り合っていくのか。
子どもたちはダンスの技術と共にそういったことも
一つ一つ学んで行くのだと思います。
ダンスという言わば心と心を解放し合う
芸術を指導する立場としては
この「分かち合う」という事を
大切に伝えていきたい
と考えております。
分かち合うということの喜び
先生も生徒もこの分かち合うという心を
レッスンの中でいつも持っていれば
子どもたちは与えることの大切さと喜びを
ダンス以外の日々の暮らしの中でも
学んでいけるようになります。
そして生徒が大人になった時には
自然と常に誰かに感謝できるように
なると思うのです。
ある日のレッスンでみんなで
スキップで横断する練習をしていました。
前の列が進み終われば次から次へと
人が後ろから流れてきます。
当然前が詰まってしまうので
「開けてね。」と生徒に伝えます。
その時に一言。
「前の人が開けてくれたら後ろの人が助かると思うんだ。」
と指導者が言うと、
「助かる」という言葉に子どもたちはやる気を出します。
「ほら、こっちこっち。もっとそこ！開けてあげて。」
と生徒たち同士で親切なやりとりが生まれます。
指導者はその瞬間に欠かさず「ありがとう！」
と伝えます。
するとその感謝の言葉に
「これくらい当たり前。」
と生徒たちはとても嬉しそうです。
分かち合うということは子どもも
大人になっても
変えがたい喜びなのだと思います。
心を育てると必要なセンスが磨かれる
モダンダンスは感情・物・動物など
様々なことを表現する芸術です。
その表現者として舞台に立ち
それを芸にするためには
あらゆるものに対してアンテナを張ることができ
敏感に察知できるセンスが
必要となります。
悲しんでいる友達の心の動き、
楽しい、嬉しい、といった自分の心。
太陽の暖かな光のなか、
風に吹かれゆらゆらとそよぐ緑。
はらはらと落ちていく葉。
リズミカルに羽ばたく鳥や
機敏に動く猫や犬。
公園でトランペットの
練習をする人の
綺麗な音色。
あらゆる人やあらゆる物に対して
いつも感動し、そこに美しさを見出していくことは
このダンスという芸術にとって
とても大切です。
その観察力は
表現の幅を広げてくれます。
そしてそのようなセンスを
身につけていると
人生はとても豊かになり
充実してくるのではないでしょうか。
レッスンの中で、
「この曲はこういうテーマだよ。」
と具体的なシーンを伝え自由に想像してもらったり、
動きの中に感情を込めてもらう練習をしています。
このように心を育てると
子どもたちは喜びを知り、
そして芸術の根本である
あらゆるものに感動する力が
身についてくるのです。
モダンダンス、モダンバレエというジャンルは
単にステップを習得するだけでなく、
心の成長に大きく関わってくるジャンルだと感じています。
分かち合うことの大切さ、変化を敏感に察知できるセンス、
あらゆるものに感動できる力、これらを身につけていった子どもたちは
思いやりの心を持っているだけでなく、
自信を持ってやりたい道を進んでいけるに違いありません。
